手術のタイミングはそれぞれだが、早期の手術により、健康寿命が延び、豊かな老後生活につながる
白内障とは、目の中にある水晶体といわれる部分が白く濁ってしまう病気です。
【症状】
かすんで見える
ぼやけて見える
光をまぶしく感じる
ものが二重、三重にみえる
めがねやコンタクトで調整しても、文字などが読みずらい
夜間の運転中にヘッドライトがまぶしい
目が疲れやすい
このような症状がある場合、白内障の可能性があります。
【原因】
糖尿病
外傷、アトピー
先天的なもの
薬剤、放射線によるもの
他の目の病気に続いておこるもの
によって引き起こされることもありますが、白内障の原因のほとんどは加齢であり、年齢を重ねるほど発症リスクは高まります。50歳になると50%の方が発症し、80歳になるとほぼ100%の方が白内障になっています。人によって様々ですが、誰もがいつかは白内障になります。
【治療】
点眼薬によって、ある程度白内障の進行を遅らせることもできますが、根本的な治療は手術となります。
白内障手術は、日本国内で1年間に190万件も行われているとてもポピュラーな手術です。体への負担が少なく、麻酔自体も点眼薬やほとんど痛みを感じることのない注射で済みます。手術自体は15分~20分ほどで終わり、日帰り手術も可能です。
【眼内レンズの種類】
<単焦点眼内レンズ>
焦点が1ヵ所にだけ合うレンズです。もっとも一般的なレンズであり、日本では約95%の方がこちらのレンズを選択していると言われています。特定の距離(遠く・中間・近くのいづれか)にピントが合うように設定されており、その他の距離を見たい場合はメガネによる矯正が必要です。
単焦点レンズは、グレア・ハロー(暗いところで光がぼやけて見えたり、ぎらぎらと眩しく感じる現象)が最も少なく、コントラスト感度(見え方の質)が良いと言われています。眼鏡をかけるのが苦ではなく、1つの距離をできるだけ鮮明に見たい方におすすめのレンズです。
<多焦点眼内レンズ>
単焦点眼内レンズと異なり、複数ヵ所に焦点を合わせることができ、遠くにも中間にも近くにも焦点を合わせることができます。できるだけ老眼鏡やメガネをかけたくないという方におすすめのレンズです。
ただし、単焦点レンズと比較するとグレア・ハローが起こりやすく、ややコントラスト感度が落ちると言われています。また、多焦点眼内レンズの中には、グレア・ハローやコントラスト感度の低下が出にくい焦点深度拡張(EDoF)型レンズというものもあります。遠方から中間距離までと見える範囲はやや狭いですが、グレアやハローは少なく、夜間の見え方がよいレンズです。夜の運転が多い、読書など手元を見る時は、眼鏡をかけてもよい方という方におすすめのレンズです。
多焦点眼内レンズも日々進歩しており、以前の多焦点眼内レンズに比べるととても見やすくなっています。
患者さん一人ひとりの生活スタイルや、どんな見え方・過ごし方をしたいかに合わせて眼内レンズの選択を行うことが大切です。
【手術のタイミング】
私は「生活していく上で、見え方に困ったら手術のタイミングです」とお話しています。
例えば、タクシーの運転手さんの場合は、標識が見にくい、夜間まぶしくて運転に支障をきたすなど、安全な運転に影響があるようなら手術が必要になるでしょう。免許更新にも0.7以上の視力が必要ですので、手術の適応となります。
一方で、仕事を引退して自宅で過ごすことが多い方の場合は、視力は0.7なくても家の中での生活に不自していなければ、急いで手術を受ける必要はありません。
ただし、白内障を放置しすぎると、手術が難しくなったり、合併症のリスクが上がってしまうこともあります。中には、眼内レンズが挿入できない、術後に思ったより視力が出ないという方もいらっしゃいます。ですので、手術のタイミングの見極めが大事です。早期に手術をすることにより、手術の負担を減らせたり、元の視力に回復しやすくなったりします。適切な時期を見極めるためにも、早めに診察を受けられることをおすすめします。
また、こんな報告もあります。
・白内障で視力不良の人は、視力良好な人と比べて認知症のリスクが2.9倍高い。
・白内障が進行するほど身体活動性は低下し、高血圧、動脈硬化、高脂血症、肥満などを引き起こし、脳血管障害のリスクが上がる。
逆に言えば、白内障手術によって、多くの健康関連指数が上昇し、認知症のリスクが大幅に下がるなどのメリットもあるということになります。
早期の手術により、健康寿命が延び、豊かな老後生活につながるのではないかと思います。
- 辻堂おひさま眼科クリニック
- 佐藤 尚栄 院長
- 藤沢市/羽鳥/辻堂駅
- ●眼科